大阪地方裁判所 昭和28年(ワ)5791号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実〕原告及び被告会社は何れも大阪市内に営業所を有する鉄鋼材販売業者であるが、被告会社は昭和二十八年十一月十三日厚板鉄板合計三十トンを訴外A会社に売渡し、その際自己の倉庫宛の、右鉄板をA会社に引渡されたき旨記載した出荷依頼書を作成し交付した。A会社は之を同日原告会社に売渡し、右出荷依頼書を譲渡した。そこで原告会社は右出荷依頼書を持参して被告会社倉庫に赴き、右鉄板の引渡を求めたところ右倉庫係は右依頼書を受領すると共に新に物品受領書を作成して原告会社に交付した。原告は右物品受領書の交付を受けた際被告会社との間に占有改定が成立し、原告会社は本件鉄板の引渡を受け爾後被告会社が原告会社の為に代理占有を為す関係にあるものとして、完全な所有権を取得した。よつて本訴に於て右鉄板の引渡を求めると主張した。
これに対し被告は原告に本件鉄板の所有権あることを争い、右出荷依頼書は譲渡禁止になつて居りA会社より原告が之を譲受けても何等の権利を取得しないし、又物品受領書は原告会社の社員が被告会社倉庫係を欺罔、脅迫して作成させたもので占有改定は成立していない。従つて原告会社に対し本件鉄板を引渡すべき義務は存しないと反駁した。
〔判断〕先ず本件鉄板は鉄鋼材販売業者が種類を以て表示した商品を販売したものに該当し、単に被告倉庫内に存するという限定があるのみであるから種類物の売買であり、之が特定した点については何等の立証がないから之を買受けたA会社、原告会社は未だ所有権を取得していない。
又本件出荷依頼書は、A会社に対する鉄板引渡請求権を表示している有価証券であるが有因的証券であり原因関係たる被告、A会社間の売買契約の影響を受けるものであり、本件について被告会社、A会社間に代金を決済する迄引渡しをしないという特約があり、会社は右代金を未だ支払つていないことが認定されるから、之を譲受けても原告は無条件に鉄板引渡請求権を取得し得ないものである。
又本件物品受領書の交付については、被告倉庫係は被告の占有補助者であつて独自の占有権者でないから同人が原告の要求により何等の授権なしに独断で本件物品受領書を交付しても、之によつて被告が爾後本人たる原告のために占有を為すべき意思を表示したものと認めることは出来ず、原告、被告間に占有改定が成立したとは認められない。
以上の如く認定して原告は未だ完全な所有権を取得したものでなく、又被告に対し引渡請求権も取得していないからその引渡を求めることは出来ないとして請求を棄却した。